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《Vol.10》 旋律楽器の調性感 / ゼクウェンツの役割り

みなさんこんにちは。!(^^)!

皆さんが演奏をする際の根拠について、確実な知識を持って頂くということは、
納得のいく演奏を何度でも繰り返しできるために、ということに他なりません・・・。
『美しい演奏をする』ための確実な楽曲の理解、

単なる「好み」や「感覚」ではない、ブレない解釈のための参考にして下さい。

さて、前回ご説明したゼクウェンツ (反復進行)が、実際の楽曲の中で旋律楽器で出てきた場合の調性感や演奏の工夫について、少しづつ具体的な譜面を使って説明していきますが、その前に今回はまず、
旋律楽器=メロディーしか書かれていない譜面の和声、カデンツの見破り方を簡単に説明します。

フルートやヴァイオリンその他の旋律楽器はもちろん、アンサンブルでは和声楽器に所属することの多い金管楽器や低音楽器にとっても、例えばコンチェルトなどのソロ・旋律パートを吹く際の参考にしてください。

先ずは音楽スタイルについての理解を確認していただくためにポリフォニーとホモフォニーから始めましょう。

もくじ

ポリフォニーとホモフォニー・・・?、他には?

音楽形態の代表にはポリフォニーとホモフォニーという代表的な形態があるのはご存じだと思いますが、他の主な種類も含めて、先ずはそれぞれの特徴を確認しましょう。以下、代表的な音楽のスタイルです。

  • Monophony / モノフォニー ⇒ 単一声部の旋律型音楽スタイル ⇒ グレゴリア聖歌、民謡、子守歌など
  • Polyphony / ポリフォニー ⇒ 複数のパートで和音が表面化しない多声音楽スタイル ⇒ フーガ、対位法語法など
  • Homophony / ホモフォニー ⇒ 和声的楽曲、旋律以外に和音が表面化した音楽 ⇒ コラール、伴奏付き音楽全般
  • Heterophony / ヘテロフォニー ⇒ 和声的規則性がなく同一旋律がずれを生ずる多声音楽⇒ 複数僧侶の読経など
  • Dodecaphony /ドデカフォニー ⇒ 十二音音楽、セリー

まぁザッとこんな種類がありますが、1つのスタイルで全曲を書かれたもの(フーガやコラール、一般のピアノ伴奏つき歌曲やソロ楽器のソナタなど)もありますが、大曲になるとそれぞれの場面でスタイルを複数書き分けているものもありますね。

この中で特に西洋音楽、古典~後期ロマン派~近現代のスタイルで、なじみが深い音楽の多くは
『ポリフォニーとホモフォニー』のスタイルで書かれているといっていいでしょう。そして、
   

一般的な伴奏付きの音楽、和音を伴った一場面、は全てホモフォニーに入ります。 👇

一般に言う音楽の三要素『メロディー』『リズム』『ハーモニー』で書かれているホモフォニー
・『フーガ』に代表される様に和音進行は裏に隠れて多旋律の絡み合いで書かれているポリフォニー

 ポリフォニースタイルの音楽を演奏する上で(特に旋律楽器パート)、和音進行=カデンツが表面化しない・・・というところが大変重要で、実際は書かれていない裏側にしっかりとした和声進行=カデンツがある・・というのがポリフォニーの重要な特徴なんです。
 このことを計算に入れそこなった旋律の歌い方や感覚的な解釈での演奏は、根拠を欠いた不安定な演奏になってしまう・・のです。

 フーガやアンサンブル、交響曲のパート譜など、ほとんどのソロパートの譜面を単なる旋律として捉えずに、裏に存在する和音進行、特にカデンツに影響された和音関係の強弱を確認することが演奏の表情を工夫する上で、重要な根拠となることがよく分かると思います。💦

              👆演奏者にとって、これとても重要です!! (*‘ω‘ *)

旋律ラインの調性感

さてここでクイズ?です。(^^♪ 👇

  • 問1⇒旋律楽器の譜面から、具体的にはどのように書かれていない和声=カデンツを読み取ればいいのでしょう?

答え1・先ずコンチェルトやソナタの場合は伴奏譜、又はスコアの特にベースラインをチェックしてください。

多くの場面では背景に他の楽器による伴奏が付いていると思います。(パート譜の場合はスコア)
リズムやパートによってズバリこれが和音です・・と、和音そのものは書いていない場合もありますが、音の組み合わせやベースライン(実際、作曲家や指揮者はベースラインの音の配置と動きを、常に意識しています)を観察することで、そこに和音進行のヒントがあります。
そうです。終止形、半終止などフレーズの切れ目=カデンツの固まり、をベースラインが表現しているのです。

  • 問2⇒では、伴奏譜やスコアなどの和音のヒントがない、最初から無伴奏形式で書かれたソロの楽曲の場合は、どうやって裏側に隠れた和音やカデンツ・転調などを確認しますか?

答え2音型をよく見てください。
       以前にも説明しましたが、旋律の音型は 3パターンに大きく分けられます。以下。👇

そう、1)スケール、2)アルペジオ、3)ターンの3種類でしたね。
忘れている人は復習してください。💦                  ⇒Vol.5へ戻って復習する。

旋律を音型で分けた際に、その部分の所属調や和音をイメージするために活用できるのは、
      2)のアルペジォと3)のターンです。
特に、アルペジォはそのまま分三和音・・というくらいですから、和音そのもので出来ています。

*スケールも調性上の調号や臨時記号を伴い、本来であれば所属調そのものなのですが、作品中のスケールの場合は必ずしも主音から開始されているとは限らないため、調性を読み解くカギとしてよりも調性が判明した上で、その調性上の純正律音程を正確に取ることで調性の証明として機能する場合が多いです。

この形(アルペジォとターン)、又は分散和音的な音程の跳躍を旋律線の中から探しましょう。
例えば下記のような音型です。

赤の細いカッコはアルペジォ、濃いカッコはターン、赤の塗りつぶしはスケールを表します。
*ターンというのは跳躍して戻る音型のことで、強いて言うならばアルペジォの変奏型・・・でもあります。

さてこうして見てみると、調性感や和声の解釈に最も関係のある代表的な音型とは、
装飾音としての非和声音を含んだ跳躍のある音・・ということになります。

音の跳躍(=アルベジォとターンに代表される)は、3度~8度(オクターブ)と実際の跳躍する度数の種類は多いですが、3度・4度・5度・6度の跳躍やターンの音型、はそのまま和声音であることが多いのです。
そしてもちろんアルペジオは和音そのものなんです。(分散和音というくらいですからね。笑)

倍音系列上の和音の成り立ち・構造を思い出してくださいね。           👉 ⇒Vol.2へ飛ぶ


という理由から、楽曲を解釈するときに旋律の途中でも跳躍の形和音感覚に注目する事になりますね。

せっかくのメロディー楽器なのに、あえて和音を暗示する「アルペジオ=分三和音」の場面を創る・・というのは、どういう作曲家的意図だと思いますか?
コンチェルトのカデンツァ部分を思い出してみてください。旋律楽器でも容赦なく分散和音の嵐がきますよね。そこでは、音楽的な解釈や歌い方・美しいヴィヴラートなどは要求されずに、ひたすら正確な機械的アルペジオを弾かされることになります。笑

・その楽器の演奏の技巧を発揮する「腕のみせどころ」・・・でもありますよね。(*^_^*)

そして、ここでようやく本来の内容に戻りますが、機械的アルペジォや一部ターンの音型をそのまま一定の音程で、2度ずつ、又は3度ずつずり下げ(ずり上げ)てゆくとどうなるでしょう・・・?

はい、そうです。ゼクウェンツの誕生です。!(^^)!

そして、いよいよゼクウェンツです。

そして旋律上のゼクウェンツには以下の2種類があります。

1)調性を離れずに『音型の模倣』という流れだけのゼクウェンツ。⇒ 臨時記号が付かない
2)転調(所属調)を含むゼクウェンツ。⇒ 経過中調の調号としての臨時記号が付く

上記1)の『転調しないで臨時記号が付かないゼクェンツ』
上記2)の『転調を伴う臨時記号が付くゼクェンツ』

ゼクウェンツの役割は、
上記で説明したように機械的な並行移動を表現する、技巧的な演奏者の腕前の見せ所・・・ということと、
副Ⅴの和音の効果と同じくフレーズの『引き延ばし・・・という二つの役割があります。

そして、ゼクウェンツの意味と役割と効果を理解することで、
・楽曲全体の構成と橋渡し(=展開)としての役割り
・ゼクウェンツ前後の調性の関係、転調など楽曲の全体像が見えてくるということになります。

1つづつの音に個々のエネルギーを使わなくても、固まりとしてのゼクウェンツ全体の方向性やアクセントを強調してあげれば、十分にモノを語る橋渡しの場面』としての役割が際立つことになりますね。(^^♪

⇒・開始調(ゼクウェンツのスタート調)と到達調(ゼクウェンツの終わりの調)
⇒・クレッシェンド又はディミヌェンドなど、ゼクウェンツ全体を通しての表現の方向性

👆などをしっかりと決定しておけば、長い演奏の際の神経を技巧&音程だけに向けて(スポーツ的?!それだけに音程を外さないよう、鬼のようにさらわなくてはならないぞ!!笑)、音楽的、内容的には余裕が持てる箇所・・・、そして、技巧的に『その楽器を演奏している醍醐味に浸れる箇所』・・・、ということになりますね。(^^♪

* * * * *

それでは最後に、スケールやアルペジオ、ゼクェンツを使って名旋律を魔法のように次々と排出した作曲家の代表として、
チャイコフスキーの名曲の一部分を見てみましょう。

ご存じのようにチャイコフスキーの作品には優れた名旋律が多いですが、美しい旋律を裏付ける和声法、オーケストレーションの大家であることも忘れてはいけないと思います。

オーケストレーションについてはまた先々に詳しく触れますが、ここではプロフェッショナルな和音の連結=『揺らし』
カデンツと調性を自由に操る腕前の良く分かる場面を、名曲の一部から書き出してみました。

今回ご説明した調性を揺らす『ゼクェンツ』が一段と光っていて美しい場面ですよねぇ・・・。!(^^)! 👇

*次回は旋律中の『非和声音』の詳しい説明、見破り方とその効果について詳しくご説明しますね。お楽しみに!!

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この記事を書いた人

作曲家・指揮者・ピアニスト

これまで40年余り、音校講師としてのLessonや講義の他、オーケストラ・ブラス・ミュージカルなど、多くの演奏現場や編曲の仕事での経験を元に、音楽演奏の貴重なヒントになる内容をお伝えしてゆきます。

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