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《Vol.8》~ 五度圏と調性 ~ / 調性を決定するのは・・!?               

みなさんこんにちは。!(^^)!
前回の《コラム特集》はいかがでしたか?
これからも、数回に一回の割合でコラムのみの回を作っていきたいと思います。(^^♪

そして他にも、《作曲家シリーズ》(仮タイトル)と称して毎回一人づつ作曲家を特集し、
その作曲家の書式(作品のスタイル)、いくつかの代表作についての具体的なアナリーゼ
などを元に、演奏の際のヒントや根拠・・・『何故そのように演奏するのが正しいのか』
について部分的に詳しく検証してゆく内容をお届けしてゆきたいと思います。

どうぞお楽しみに。(*^^)v

* * * * *

それでは始めましょう。今回の内容は以下です。

もくじ

五度圏てなに?

さて、ここまでのBlogでは共鳴・響き・和音・スケールと続けてきましたが、ここからいよいよ調性の事に入りましょう。

先ずは下の図をご覧ください。
これはご存じ『五度圏』といって全調性の関係性を表しています。 

ではさっそく、この『五度圏』も倍音表と同じようによく見てみましょう。正面のてっぺんがCdur=ハ長調です。


右回りが#(シャープ)系の調整で、5度づつ音程を上に積み重ねてゆくと、
それに伴って#が増える調性へと進んでゆきます。

【 C⇒G⇒D⇒A⇒E⇒ H⇒ Fis ⇒ Cis 】これで(#7つまでの)#系全部の長調で、

・その短3度下に並行調として、短調の#系調性が同じ音程関係で並んでいます。(五線内側の調性名。)

【 a ⇒ e ⇒ h ⇒ fis ⇒ cis ⇒ gis ⇒ dis ⇒ ais 】これで#系全部の短調です。

では今度は左回りを見てみましょう。


左回りが♭(フラット)系の調整で、5度づつ音程を下に積み重ねてゆくと、
それに伴って♭が増える調性へと進んでゆきます。

【 C⇒F⇒B⇒Es⇒As⇒Des⇒Ges⇒Ces 】これで(♭7つまでの)♭系全部の長調で、

・その短3度下に並行調として、短調の♭系調性が同じ音程関係で並んでいます。(五線内側の調性名。)

【 a ⇒ d ⇒ g ⇒ c ⇒ f ⇒ b ⇒ es ⇒ as 】これで♭系全部の短調です。

(・・・調性名は長調=大文字、短調=小文字で全てドイツ音名で書いています。・・・)

五度圏からわかること・カデンツの正体

では、五度圏(上のサークル図)の右サイド、A Dur (♯3ツ)の所から、順番にC Dur に向かって反時計回りに4ツ進んでみてください。双六のように・・。苦笑

この時に通過する調整は、
A Dur 、⇒ D Dur 、⇒ G Dur 、そして目的調の C Dur へとたどり着きますよね。

この調のルート(通り道)を和音の度数に変換すると、
【 Ⅵ ⇒ Ⅱ ⇒ Ⅴ ⇒ Ⅰ 】・・という和音のルートができます。

これこそがカデンツ(和音進行=コード進行)のルーツなんです!!
カデンツ、これこそが和音進行の基本形であり、音楽のフレーズをフレーズたらしめる本体なんですね!

英語の文法の基礎で言えば、S+V+~ という基本の五文型と全く一緒で、
音楽上のフレーズを構成する基本的最小単位・・・ということになります。

次の項で詳しく説明しますが、導音が主音に進もうとする力を利用して調性は決定されるので、
和音上に導音が含まれる度数の和音=Ⅴ度の和音(ドミナント・・支配するという意味)が
主和音(トニック)へ繋がる力を持っている最強の和音ということです。

ここで『カデンツ』という言葉が出てきました。

『カデンツ』とは、音楽のフレーズを形成する最小単位を『和声進行』の側面から見た固まり
のことで、まさにそこにこそ自然な演奏のカギがありますので、次回のBlogで詳しくご説明します。(*^^)v

和音の度数がそれぞれ所属する

Ⅰ⇒Ⅵ⇒Ⅱ⇒Ⅴ⇒Ⅰをカデンツで表すと T ⇒ S ⇒ D ⇒ T となり、1つの代表的な1フレーズのパターンになります。

ここで重要なのが最後の Ⅴ ⇒ Ⅰ 、つまり終止形という調性を決定づける根本的な和音進行です。

その根本的な和音進行の核となるのが、
『導音』が『主音』に向かうエネルギーの発見です!
(ハ長調でいうとシの音が ⇒ドの音に向かう原始的なエネルギーのことです。)

大事なところなので、次項でさらに詳しく書きますね。

調性を決定するのは・・?

さて、ここでVol.6のスケールを思い出してください。

主音からスケールが始まって、五度圏上の第五音を通過して『導音』(ハ長調のシの音)が主音に到達して、1オクターブを形成していますね。

これを『導音』が『主音に解決する』といい、この『導音』が調性を決定します。
実際、前回出てきた『純正律』ではこの導音を高めに取って、主音への解決を【演出】するのです。

そしてその導音を含む和音は、ドミナント=Ⅴ度の和音ということになるので、

Ⅴ度 ⇒ Ⅰ度の和音進行を終止形といいます。

この導音を含むⅤ⇒Ⅰの終止形こそが、調性を決定する重要な要因・・ということですね。

ちなみに、終止形にはこの他に
  *Ⅴ ⇒ Ⅵ = 偽終止、
  *Ⅴ で止まる半終止、
  *Ⅳ ⇒ Ⅰ に変則的に進む変終止(アーメン終止)

の4種類がありますが、決定的に調性を決めるⅤ ⇒ Ⅰの終止形を《完全終止》といいます。

『楽典』的には、この完全終止にも種類があって、
 同じⅤ ⇒ Ⅰの終止形でも、
*主音で終わる旋律は男性終止、第3音で終わる旋律は女性終止

 などと分けることもあるようです。
*さらに、アーメン終止(変終止)とは別に、

 変格終止(正格終止に対する)も存在するようですね。

いづれにしても、
この『導音』を含む『終止形』が調性を決定する
ということは音楽のフレーズを意識するうえで、大変重要な意味を持ちます。

文章で言えばピリオド・・に相当しますね。

特に短調のスケール&旋律上では、自然短音階(臨時記号が付かない)に対して、
和声的にも旋律的にも(和声短音階、旋律短音階)、どちらの場合も
『導音』に臨時記号を付けて半音上げる(=純正律で導音⇒主音間を狭く取るのと同じ)わけです。

そのように処理することで、長調にとっても短調にとっても、
『導音』が調性を決定するキー音としての存在を強く主調することになります。

繰り返しになりますが、この『導音』を含む『Ⅴの和音=ドミナント』と『主和音=トニック』の関係は、
調性を決める決定的な要因になることのみならず、こと調性音楽にとっては、
音楽の息の長さ=フレーズをも決定する決め手になるのです。

終止を中心に、Bachの有名な『平均律』のポリフォニー(対位法による多声音楽)スタイルの音楽は書かれており、
その後200年余りにわたって「和声」の発達を続ける間、作曲家にとっての音楽語法の核になっているのです。
*この辺りは、後の作曲家の語法にフォーカスしたBlogで詳しく説明してゆきます。(^^♪

調性を決定するのは『導音』と『終止形』・・・というのがここでの解答というわけです。

楽器の調性について

さてせっかくの五度圏ですから、もう一つそこから読み取ることが出来る面白い事実を挙げてみましょう。

ズバリ!!
右回り=♯系は弦楽器の開放弦(ド・ソ・レ・ラ・ミ)そのものであり、
左回り=♭系は管楽器(特に金管楽器)の変え管(=移調楽器)の調性そのものである。

という事に気が付きますよね。
面白いですねぇ。
つまりは、この五度圏の跳ね方も自然倍音に沿っている・・といことに他なりません。

ちなみにこれほどハッキリと、

弦楽器の倍音構造=♯系の倍音の上にある。
・管楽器の倍音構造=♭系の倍音の上にある。

と正反対の方向に基音を持つ楽器同士が同居する「オーケストラ」(=管弦楽)とは、
まさに・・異種格闘技・・のごとく・・・ですよねぇ~。笑

このことは、先々のBlogでお伝えする”チューニング”にとってのヒントになります。
是非覚えておいてくださいね。

コラム

さて、今回は調性にとってネックとなる『導音」と『終止形』についてザックリとお話ししました。

そこで、今回の”コラム”ですが、
導音の役割から五度圏を利用して平均律を整備・・という偉大な功績を残したBachについて、
「さすがにBach!」という下記のようなエピソードが残っていますのでご紹介しましょう。

『子供を叱ったお話し』です

* * * * *

ある時、子だくさんのBachが仕事で机に向かって譜面を書いているときに、お子さんの一人が隣の部屋でピアノ(当時はチェンバロ)を練習していたんだそうです。

その時、友達が遊びに来てお子さんはスケールの途中、しかも《ドレミファソラシ》の『シ』の音を弾いたところで(運悪く?)スケールをストップして「はーい!」と遊びに出ようとしたところを、隣の部屋からBachお父さんがスッ飛んできて、解決するドミソの主和音をジャンっと弾いた後に子供のアタマをポカリと殴ったのだそうです。
                                      ~「Bachの思い出」より~

それ程に『導音』が『主音』に解決することにこだわったBachが、
自身の遺作となった『フーガの技法』~The art of FUGA~ の最後の最後はドミナント(正確にはドミナント上の保続音)
で終わっている(力尽きた?)のです。

実はこの『フーガの技法』は、Bachの集大成であるフーガ語法の最高傑作で、その中で相当の数の、
「フーガのテーマのヴァリエーション(反行形や逆行形を含む)」や、第二テーマなども新たに書き加えており、
この「第二テーマ」(もともとのフーガは単一テーマで一曲)が、後に転調を伴ってさらに発展し、
やがてソナタ形式を生み出すのてすから、本当にもしもBachがあと50年生きていたら、ソナタ形式も、オーケストラで演奏するソナタ形式(=交響曲のこと)・・でさえもBachが開拓したでしょうね。
人間ですから残念ながらここで寿命が来て、その仕事はハイドンやモーツァルトに託されたわけですが・・・。

それにしても、第二テーマどころか第三テーマ
(しかも悪ノリして?第三テーマは自分の名前、つまりB・A・C・H(=シ・ラ・ド・シ)をそのままテーマにしてしまった!)まで引きずり出して、その決着を自ら付けることなく・・・。
あれほどに(上記『子供を叱った話し』のエピソード)主音への解決にこだわった人が、皮肉なものですよねぇ~。😢

* * * * *

お疲れさまでした。!(^^)!

今回のBlogはいかがでしたか?
内容に関するご質問・ご意見・ご感想などは書き「お問い合わせ」よりどうぞ!

次回は『カデンツ』と『フレージング』についてです。


どうぞお楽しみに!(^^♪


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この記事を書いた人

作曲家・指揮者・ピアニスト

これまで40年余り、音校講師としてのLessonや講義の他、オーケストラ・ブラス・ミュージカルなど、多くの演奏現場や編曲の仕事での経験を元に、音楽演奏の貴重なヒントになる内容をお伝えしてゆきます。

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